2015/10/19 20:09
戦術ループ Tactics loop
数年前のラグビーより、近年のラグビーの方がおもしろみが出てきた。15-20年ぐらい前に、リーグラグビーのディフェンスシステムが登場して、なかなかタイトなゲームばかりになり、強くクラッシュするチームが増加して、それはそれで面白いのだか、ラグビーの醍醐味が、均質化された感があった。そのため、ラグビーは、実力のあるチームが勝利し、劣るチームはなかなか勝てなかったということも、勝負としての楽しみも半減されていたように思う。
しかし、ここ近年、南半球で行われる、スーパーラグビーにおいて、実力あるチームがあっけなく敗れることや下位チームが見事に戦い勝利することがあり、「リーグ戦は、こんなものか!?」と考えていたが、ワールドカップを観るにつけ、いかに分析し戦術を立て勝負するのかが重要であるかを知らされた。なぜなら、同一チームでも戦い方が、変化するからであり、特にディフェンスにおいては、顕著である。
当初、敵のプレッシャーが強いために、ディフェンスシステムを変更やシステム制限されるだけだと考えていたが、それだけではなく、意識レベル、すなわち、戦術の不徹底、変更、可変される、高いレベルで遂行されたり、されなかったりとゲーム毎に激変される場合がある。これは、他者との関係において、戦術同士の凌ぎ合いが、ゲーム前にあることを示唆している。
PDCAサイクルという、計画、行動、評価、行為というサイクルを用いて、両者のSW、ストロングポイントとウィークポイントを比べて、ゲームプランを構築し、戦術を立て、落とし込むというのが、大まかな流れである。しかし、これでは、近年ビジネスの世界でも成果が出せないといわれている。そこで、注目されているのは、完膚無きまでに敵を叩きのめすOODA LOOPという軍事部門から開発された、戦術思考がスポーツ界の一部でもにわかに注目されてきた。敵を、観察し、状況判断し、決断し、行為するという一連のサイクルを、しかも高速で行い、敵より先に判断し行動して先んじることで、勝利を得るというものだ。
当初、「ジャンケン理論」と幼稚なことを考えていた。「グーに勝つのは、パー。パーに勝つのは、チョキ。チョキに勝つのは、グー」と戦術にも一長一短有り、どこかにほころびがあり、それを、ゲーム内でやり合うと、戦術的な戦いがラグビーでも観られると。ワールドカップを総べて考察しているわけではないが、毎ゲーム、内容が異なることや前後半で戦いが異なることがある。ゲーム内で、戦術変更、戦術修正を行えそうなのは、ニュージーランドとスコットランドであった。ニュージーランドにおいては、戦術をゲーム中にも変幻自在に変更できる徴候があるように感じられる。これを、戦術ループ(Tactics loop)と呼びたい。今後のラグビーは、この戦術ループを高速でゲーム中に行えるチームが、世界を魅了するだろう。
日本ラグビーは、考えると、脳機能の良さを使い切っていないのが残念である。スキルは、自動化し脳の使える範囲を多くするために、小脳で処理し、戦術判断は、大脳新皮質をフル回転させる必要がある。こう考えると、スキルの自動化ばかりのトレーニングに特化しすぎて、観察し状況を判断し、行動する戦術ループは、育成されないばかりか。やり方を変えることなく、頑なまでに同じことばかりを、繰り返すことは、大脳新皮質を活用せず、小脳ばかりを使う思考方法を使用していては、後塵を拝するだけだろう。